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「大場くんだよね?」
「そうだけど…」
わざとらしく恍けたけれど、内心ガッツポーズが掲げられていた。
白井華がとうとう僕に話し掛けてきたのだ。
「同じクラスになったことないからわからないかもしれないけど、私Cクラスなの」
もちろん知っている。
むしろ、同じ学年の男子で白井華を知らない人はいないレベルだ。
「いや、知ってるよ。白井さんでしょ?」
「そうそう!知ってたんだ!」
弾んだ声で白井華は嬉しそうに笑顔になる。
間近で見た僕は、正直ゆでだこになりそうに顔が熱くなった。
可愛すぎる。
「嬉しいなぁ。あ、いきなり話し掛けてごめんね。大場くんって本好きなの?」
「いや、いいけど…まぁ、それなりに好きだよ」
「そうだよね!そうじゃなきゃ学校の図書館で本借りたりしないもんね。委員もやってるし」
白井華が本を読んでなきゃ、僕もここまで本は読んだりしなかっただろうし、本が大好きかといえば、未だにハッキリとイエスとは言えない。
「最近本を借りる度に大場くんの名前が書いてあって、同じ学年だから気になってたの」
5月半ばに始まったこの作戦は夏休み前にして見事に成功したということだ。
「白井さんもよく図書館来てるよね」
せっかく話し掛けられたのだから、このチャンスを無駄にするわけにはいかない。
仲良くなれるかもしれないのだ。
「あ、バレてた?」
「図書委員だから」
「そうだよね、よく考えたら大場くん貸し出し担当でよくいるよね」
今までスルーされていた存在だったのに、本を通じて過去の自分さえも認識してもらえるようになるなんて、スゴい成果だ。
この作戦を思いついた自分を褒めてやりたい。
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