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「それ、借りるの?」
「あ、そうなの。お願いします」
白井華の手には貸し出しの準備をしている本と生徒カードと貸し出しカードが握られている。
それを受け取ると、バーコードを読み取り、貸し出し準備を始める。
この本も新刊で僕が先に読んだ本だ。
「これ僕も読んだんだけど、面白かったよ」
「あ、本当?大場くんがそう言うなら間違いないなぁ」
笑顔の白井華を見て、感情の行き場がなくなってきた。
心の中のガッツポーズがやり足りない状態になったことがないから、今非常に困っている。
大声で叫びたいくらいだ。
「では、夏休み前までには返却して下さい」
「はい、わかりました」
事務的会話もノリノリでしてくれる白井華を直視できず、本と生徒カードを渡す。
「じゃあ、またね。大場くん」
手を振り、去っていく白井華を見て軽く手を挙げると、背を向けた瞬間にカウンターの机に肘をついて頭を抱えた。
可愛すぎる。
何回言っても言い足りないくらいだ。
緊張が一気に解けて、汗をかいた肌を感じる。
「お、華」
図書館から出て行こうとした白井を後ろから、図書委員の委員長が声を掛ける。
「あ、順ちゃん!」
白井華は振り返り、委員長を見るとそばに駆け寄る。
咄嗟に僕は姿勢良く座りなおしていた。
そんな僕に目もくれず、委員長に話し掛ける白井華は笑顔だけれど、さっき僕が見ていた表情とは違っていた。
そう見えるのは勘ぐっているからじゃない。
委員長が白井華を名前で呼び捨てにして、男である委員長を白井華がちゃん付けで呼んだ時点で、僕の恋は失恋フラグを立てたのだ。
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