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面接を申し込んでもいない会社にある日突然正式採用されて、それこそ勉強どころかそんなものがあるかも知らない技術専門部に放り込まれたわけではない。
むろん資格や意欲のある新入社員はそういう部署にいるが、後藤は『総合的』に評価されて採用されたはずである。
だから──
「だから、女の上司って嫌なんだよなー」
その言葉に祐美は、自分の耳の中で何かがぶつりと切れた音を聞いた。
ざわざわと耳の中の雑音は大きくなり、祐美は周りの様子がまったくわからなくなった。
だから女は───
何度言われたことだろう。
それでもまだ言ってきたのは彼女よりも年上で、社会経験も立場も十分に上の者たちだった。
言いがかりのような時もあれば的確な指摘の時もあり、祐美も自分の未熟さをわかってそれを飲み込んできたのである。
もちろん、祐美を引き立ててくれた女性上司が大きな盾となってくれたこともあり、味方になってくれた同じ課の社員が男女問わずに多くいてくれたからこそでもあった。
だが、その男性社員の多くは祐美よりもはるかに早く高く出世してしまったり、女性ならば係長どころか主任となる前に結婚退職してしまい、同じ課にはほとんどもう味方はいない。
だから──
これだから新入社員は。
別のどよめきが、室内を駆け巡った。
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