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そう言い終わると、カードの山が祐美に差し出された。
「状況はわかったわ。あなたは?どうしたいの?」
「え?」
「憂さ晴らしに『表』の店で万引きすればスッキリ?何食わぬ顔で、明日から同じ日々を過ごせる?」
「そっ……そん、な……つもり……」
そんなつもりじゃ、ない。
そんなつもりじゃ……
そんなつもり、で。
だんだんと声が小さくなりうなだれた祐美の前に、シュッと小気味よい音を立てて、カードがきれいな虹の形に広げられた。
「選んで」
「えっ」
「1枚だけ。従いなさい」
有無を言わせぬ声に、祐美は恐る恐る指を伸ばして、真ん中の1枚をそっと差した。
そのまま抜き取って自分の方からめくろうとすると、向かいの席から腕が伸び、祐美の指をくるんだまま左側から表に返す。
棒を持った巨大な手が雲の中から生えている。
「あら。味方がいるじゃない」
「は?え?」
「ワンドのエース。正位置。絆。情熱。技術の創造。あなたのやり方すべてが間違っているわけではない。でも、進歩の時。よかったわね」
「は…あ……あ、ありがとう、ございます……」
何が何やらわからない。
顔を上げれば、にっこりと微笑む美しい人の姿がある。
相変わらず、女性か男性かわからないけれど。
「そうね……『自暴自棄』ってご存知?」
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