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「ええ、言葉では……」
「あなたは今その状態。非難され、責められ、曲げることを強いられ、何より自分に固執するがゆえに。変わるチャンスが来た。そう捉えた方が、発展があってよ?」
「そう……ですね……」
さっき聞いた『小狡いぼうや』という言葉に、思わず後藤の顔が浮かんだ。
「あのっ……こ、小狡いぼうや、って……」
「そうね。まだ経験も知識もないのに、自分は一人前だと…思ってもいないから、簡単に人の力を借りる、ずうずうしい子。いるんでしょ?その子に引っ掻き回されて、あなたと同じように変化を望まない人たちが、あなたに『引っ込め』と強要したのでしょう?」
「す…すごい……」
思わずポカンと口が開く。
「つまらない言葉と思わず、受け入れ、苦い薬だと思って飲み込みなさい」
「は、はい……」
スッと祐美の方へ、まだ飲みかけだったカップが押される。
ずいぶん時間が経つはずなのに──そこにはゆらゆらと淡い湯気が揺れていた。
苦い薬──苦いくすり──にがいくすり──
お茶はほんのりと温かく、苦く、甘く、眠気を誘い──青は群青に、群青は漆黒に───
苦い薬ね。
「変われ」と言いながら「変わるな」と言う。
変わるのはあなた。
変われないのは上に立つ者。
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