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「いらっしゃいませ」 祐美は手に取ったスカーフを握りしめたまま、ビクッと肩を震わせた。 店員の姿が見えないことを確認して、このお店に入ったのに。 声は真後ろではなく、視界のギリギリ片隅に入る右側から聞こえたのだ。 誰もいなかったはずのカウンターに、ちょっと丸っこい女性がぴょこんと顔を出している。 いや、見た目でも身長150㎝弱ぐらいの小ささではあるがちゃんとした成人女性で、チリンチリンシャラシャラと賑やかな音を立てるさまざまなアクセサリーをつけていた。 インドのサリーのような布を体に纏い、頭にはアラブ男性が被るような長いターバンをつけ、それにも派手な色帯を何本も巻いている。 こんな目に付く人間を見落とすはずなんてない。 きっとカウンターの裏にでもいたのだろう── そう思ってそちらに目をやると、そこはガラスすらないただの棚だった。 店内は蛍光灯だけでなく天窓からも明るく光が差し込み、人影どころかこんな鮮やかな衣装を着けた人間を見落とすはずはない。     
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