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微かに躊躇いの声を上げた祐美は、ゆっくりと目を上げた。
さっきの店員は目にも鮮やかな派手な色彩の『衣装』と呼べるような服を着ていたけれど、向かいにいるのは様々な『あお』色の『衣装』を纏った髪の長い女性だった。
女性───?
声は確かに女性だったけれども、なぜか輪郭がブレているように正体がはっきりせず、祐美はどう対応していいのかわからなくなった。
女性……男性……中間……女性寄り……女性のような……違うような……
『曖昧』というのが正しいのだという気がしたけれど、その『曖昧さ』こそ、祐美にとっては恐怖心と最大級の嫌悪感を引き起こすものであり、なぜかわからないけれどいきなり腹が立ってきた。
?
「あのっ!いったい何が何なのかっ……だいたい、ここはどこなのっ?!」
心臓がバクバクと速くなって嫌な汗をかくのを感じながら、祐美はじっくりと『来店カード』を眺めているその人物に怒鳴りつけた。
逆ギレだとは自分でもわかっている。
わかってはいるが──ギギッガツンッという音は、確かに木の床に椅子が倒れたはずだ。
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