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ある日の学校で、仕事の最中に母さんが倒れたと先生から聞かされた。母さんは、そのまま隣町の大きい病院に運ばれ、僕は生まれて初めて独りぼっちの夜を過ごした。夕飯は隣のおばさんが世話をしてくれたが、おばさんが帰ってしまうと、途端に家の中が夜の森のような不気味な場所に思えてきた。いつも母さんが座っている椅子はまるで墓石みたいで、僕は安全な場所を探して家の中をさまよった。結局、台所の隅で毛布を頭からかぶって寝た。あくる朝、ピーナツバターを塗りたくったパンを頬張っていると、なぜだか涙が出てきて止まらなくなった。
僕は将軍屋敷に行くことにした。
外から学校に行く子どもたちの声が聞こえてくる。それが止むと、勤め人が出かけていく声がし、僕はようやく表に出た。綿を散らしたような雲の浮かぶ空はどこまでもすがすがしい。
村の北の出口から延びる街道は閉鎖された鉱山に通じている。百年前にはこの村もたくさんの人が集まる場所だったらしいが、今は見る影もない。背の高い雑草に覆われたその道をしばらく行った場所に、将軍屋敷はあった。
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