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翌日の八時頃──迂闊にも焦がしてしまったトーストとスクランブルエッグを苦い顔で食べていたその時──この火野から先に梶村のアパートに行くことにしたから、悪いがそっちはそっちでこちらに向かってくれというメールが届いた。
真面目なあの火野らしくないなと、私は眉をひそめたが、手早く朝食を済ませ支度をしてから、駐車場の端にある黒のセダンに乗り込んだ。
誰しも、この世で極大の恐怖というものは、その片鱗でさえも、それが存在するに然るべき底知れぬ深淵──残酷なほどに広漠たる砂漠の中心、日の光も届かない闇を孕んだ密林の奥地、前人未到の静寂に満ち満ちた海底、極寒の大地に聳え立つ狂気の山脈──に存在すると思っている。
しかし、私が初めて宇宙的な極大の恐怖を絶望的な確信を持ってまざまざと感じとったのは、何の変哲もないアパートの一室という、極めて我々の生活に密接している場所であった。
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