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 目が覚めて最初に視界に入ったのは真っ白な天井だった。そのあまりに清々しい白はあの恐るべき体験がただの悪夢だったのだと物語っているかのように思えた。いや、そう願った。  しかし、私の願いは心配そうな面持ちで近づいてきた私の母親と厳めしい顔をしたスーツの男の存在によって打ち砕かれた。  母親は私の記憶や体調を心配していたが、しばらくしてスーツの男が私と話がしたいと言い、母親は病室を出て行った。  男は警官だった。梶村の部屋を訪ねてから既に二日が過ぎていた。聞くところによると、扉を開けた痩せぎすの男はアパートの管理人で、割れた窓に気づいて様子を見に来たところ、あの惨状に出くわしたそうだ。彼は何故私が梶村の部屋にいたのか、また、あの部屋の惨状について知っていることがあるのなら全て話してほしいと丁寧な口調で尋ねてきた。私を疑っている様子はなかったため、私は少し安心し、大体の事情をもれなく話していった。  すると、彼は本当に火野いちるさんと一緒に行動していたのかと尋ねてきた。何かの間違いではないのか、と。彼が何故そんなことを尋ねたのか私は理解しかねたが、火野は幼少の頃からの親友で人違いなどということはあり得ない。絶対に間違いないと答えると、彼の表情は困惑と恐怖と不快とをないまぜにした、ある種の醜悪さを孕んだものへと変わった。  彼はポケットを弄り、昨日のものです、とだけ言って、私に新聞の切り抜きを手渡した。そういえば、最近やる気を失っていたせいで、新聞に目を通すのをすっかり忘れていたと思いながら記事に目を通した。
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