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この事件を語るには、まず私の二人の親友について知ってもらわねばならない。
その二人。梶村夏希と火野いちるは小学校低学年の頃からの友人で、気まぐれなうえ面倒くさがりで、自分から他人と関わろうとしない性格の私にとっては、唯一親友と呼べる人間だった。
梶村は底抜けに明るく、悪戯が大好きで、クラスの皆にも概ね好かれていたように思う。ただ、少々抜けたところがあり作戦を遂行する前に標的に気づかれてしまうことも多かった。そのため、いつからか、彼はたいてい私を作戦参謀に招いていたのだが、彼のアイデアは、私の重い腰を上げさせ、綿密な計画を立てさせるほどに、ユーモアと奇抜さに満ち溢れていた。彼の作戦と私のずる賢さが合わされば、陥れることのできない標的や達成できない目的など、ほとんどありはしなかった。
その一方で、火野は唯一、私たちの悪戯を事前に止められる人物だった。彼女は非常に男勝りで、改めて思い返してみても、学校の制服以外で女らしい恰好をしていたことは一度もなかったように思う。真面目で、学校行事などにはクラスの中心になって参加するような──真っ先にサボる方法を模索する私や、行事の成功よりも混乱を求める梶村とは正反対の──いわゆる品行方正な人間だったが(だからと言った方がいいかもしれない)、私たちはよく馬が合った。
恐らく、それだけ仲が良かったからこそ、私たちが何かを企んでいることに気づくことができたのだろう。彼女の勘の良さは私にはもはや超能力とさえ思えるもので、梶村が私と組んで悪戯をするようになってからの作戦失敗の原因は九割以上が彼女だった。そんな時は、腕を組んでこちらを睨む保安官を前にして、参謀は明後日の方を向いてしらばくれ、指揮官はなおも悪戯っぽさが消えない目を反省したふりをして逸らすのが常だった。
ともあれ、それ以外の時において私たちは仲が良く、たいてい一緒に遊んでいた。他の友人が混ざることも多かったが、三人のうち誰かが欠けているようなことはまずなかった。それぞれが別の部活動に入っていたにもかかわらず、帰るのもいつも一緒で、非常に暑がりだった私や梶村が厚着をしている彼女を、全く信じられない、正気の沙汰ではないと言ってからかうのは毎年の恒例行事になっていた。
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