フォーマルハウト ―ある焼け落ちた家屋から発見された手記―

４

　私は記事の内容が理解できない、いや、認めることを恐れるあまり、その悍ましい紙片を無意識に握り潰していた。

　突然鉛の塊で殴られたかのように、私の頭は鈍重に、陰鬱に、グワン、グワンと揺れていた。

　そんな私の様子に気がつかなかったのか、彼は追い打ちにすら思える何かの書類を再びこちらに寄こした。

　あの部屋にあったモノの調査結果です。何か思い当たることでもあれば──

　そんな言葉とともに差し出されたその平凡にも見える書類には、見た目とは裏腹に、冒涜的な、黒々とした知識が詰め込まれているに違いない。

　そう分かっていたはずだった。分かっていたはずだったのに、まるで、邪悪な海流に絡めとられるようにして、書類を受け取ろうと伸びていく自らの手を、私は押し留めることができなかった。