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 そうして、私たちは梶村に大学合格を伝える旨の手紙を送ったのだが、一週間経ち、二週間が過ぎても返事が来ることはなかった。  そうなって初めて、私たちは気がついた。  三か月前のあの時、自分たちがとんでもない思い違いをしていたのだと。  私たちは春休みを利用して、できる限り急いで梶村の引っ越し先に向かったが、そこは既に売地になっており、運よくアポイントが取れた担当医師も梶村の行先を知らなかった。  恐らく梶村は各地を転々としたのだろう。私たちの幾度にもわたる連絡の試みは尽く徒労に終わり、その後、彼に関するちらとした噂すら耳に入ることは決してなかった。  私の体験した事件の幕開けとなる、あの一本の電話を除いては。
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