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十月六日午後二時十七分にかかってきたその電話は火野からのものだった。
その頃私は大学三年生だったが、不真面目の末に留年が決まったことで完全にやる気をなくし、何をするでもなくアパートの自分の部屋の天井をぼんやり眺めているところだった。
火野が言うことには、梶村の所在につながるかもしれない情報が入ったので、私にも協力してほしいと思い、急いで連絡したとのことだった。
これまでの事情と、尚且つやるせない現実を外界に追いやりたかったこともあって、私は火野の申し出を一にも二にも承諾し、詳しい話を聞くことにした。
火野が続けたことは梶村が実は養子であったことと、養父母の現在の住所が分かったということだった。養父母の家に梶村はいるかもしれないし、そうでなくとも、彼らから事情を聞けば、何かしらの手がかりが得られるに違いないと火野は言った。
火野が如何にしてこれらを調べ上げたのかは、到底想像できないし、今となっては知る由もないが、当時の私は品行方正だった彼女が違法な手段に手を染めるはずはないと、それ以上思案を巡らすのは止めにした。
私たちは三日後に梶村夫妻に話を聞くことにした。待ち合わせ場所と時間、さらに、避けられる可能性を考慮し、連絡は入れないことに決めた。夫妻が留守で空振りに終わる可能性もあったが、下手に連絡を入れて、再び所在が分からなくなるよりは遥かにましに思えたからだ。それから、どのような流れで情報を聞き出すかについて詳しく話し合った後、通話を終えた。
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