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本当にげっそりだ。なんなんだ、この人。客だから我慢してるけど。アキさんが久瀬さんの幼馴染だから、我慢、するけど。
「……数日です」
「じゃあ、明日もいる?」
「……わかりません」
「いてね?」
「は?」
なんなんですか、そう言いたいのをどうにか堪えた俺に、また涼しげに笑いながら、目を細める。
「チョコ、とても美味しいから、どうぞ」
いらない。
本当に、いらない。
「あのっ」
俺は、あんたみたいに微笑む人種が、すごく嫌いなんだ。
「あ、そうだ。ワイン、おかわりもらえるかな? 赤の」
そして、菅尾さんはわざとなんだろう。流暢なフランス語でワインの小難しい銘柄を言うと、険しい顔をした俺に笑って、ごめんごめんって、からかってしまったと、ワインの銘柄なんてこれっぽっちもわからない俺にもわかるように、ゆっくり丁寧に、もう一度オーダーをした。
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