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この人に抱いてもらいたいなんて思ってること。
「夢、じゃない、よね」
「……あ?」
「俺の、願望?」
知られたらいけないことだけれど、でもずっと焦がれてたから、夢に見たのかと思った。
「…………クロ」
「は、はい」
「お前、明日から、こっち側で寝るようにするぞ」
「!」
俺を懐にしまいこんで、そのままベッドを端から端へと、抱えたまま、ぐるりと回転。そして、壁際に押し込められた。
「本物の猫みたいにベッドからこっそり逃げ出せないように」
「ぁ、あの、これ、夢じゃない、よね? ……久瀬、さん?」
そう思ったのはこっちのほうだとぼやいて、この人が笑った。
バイト先にはすでに電話して、休みにしてもらったらしい。そもそも、仕事のピークも過ぎてきたし、一生懸命働いてくれたおかげで、仕事は予想以上にはかどったから、年末の仕事が手薄なくらい、なんだそうだ。だから、むしろ、休んでくれてかまわないと、向こうもホッとしてたって、教えてくれた。
「寝不足すぎだ、バカ」
「!」
大きな手が、俺の頭をわしゃわしゃと掻き混ぜる。
「昨日、イったまんま意識飛ばすから、びっくりしただろうが」
「え! あ、あのっ」
「ったく」
「久瀬さん?」
「中、掻き出したけど、あとで腹、痛くなったらどーすんだ」
中出し、そのままにはしておけないのか。そっか。知らなかった、少し残念。この人の吐き出したの、欲しかったのに。
「次、ちゃんとゴム買っておくから」
「……」
「おい、そこで残念そうな顔するなよ」
「だって、腹壊すのくらい、別に」
「バカ」
そうだ。ゴム、ないんだ。昨日、そこまで思い至らなかったけど、そっか、ゴム、この人は持ってないんだ。それってさ、つまりは――。
「おい、今失礼なこと考えただろ」
「! え?」
「どうせ、ご無沙汰してたよ」
なんで、わかったんだろ。俺、昔はそんなに顔に出るほうじゃなかったはずなんだけど。
「作家を舐めるなよ」
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