第1章

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― また夏のみんなで集まろうよ。みずき、ほかの子たち誘ってくれよ。  「やったー、じゃあみんなに……」  いいかけて、あたしは止まった。  「カイ知ってたっけ? エカキ、食べ物にアレルギーがあるんだよね」 ― わかった。  実に簡単にカイは請け負った。 ― エカキがOKだったら、鴎から家へ連絡させる。鴎は看護師と栄養士の資格持ってるから、アレルゲンの除去メニューを考えさせるよ。食事以外に考慮することも家の人から聞く。だから、みずきはみんなにオファーして参加の意向を聞いてくれないか。スケジュール等詳細はメールで送る。  ……金持ちすごい。    まず、あんなは即座にOKだった。  次にエカキに電話をかけて、食事やなんかに対応してもらえることを伝えた。 ― 弁当持ってでも、ついていく。  エカキはうれしそうにOKして、うれしそうに聞いた。 ― みずき、もうエースには連絡した?  「えっと……」  なんとなく、あたしは避けていた。気がつかないふりをしていた。  でも、カイのいう「夏のみんな」にエースが入ってるのは当たり前だ。  あたしの態度を知っているのか知らないのか、エカキはずっとうれしそうだ。 ― じゃあ、ぼくがエースを誘うよ。任せて。  「助かる」  あたしはそういうのが精いっぱいだった。     △  アラームが鳴る前に起きた。  カーテンを開けたけど、外はまだ夜とおんなじだ。遠くでカラスがかあかあ鳴いた。  リビングに出ると、明るいキッチンから智春さんに声をかけられた。  「おはよう」  「おはよ」  その後ろからおかあさんが顔を出す。  「まあ珍しい、雨が降らなきゃいいけど」  「それ、おかあさんが早起きしてるから?」  あたしがいうと、カウンターへ出しかけたお皿を引っこめようとする。  「あっそう。朝ごはん食べたくないのね、あんた」  「なにをおっしゃる美しく勤勉なるおかあさま」  大好きなおかあさん手作りのフレンチトーストをのがすわけにはいかない。  メープルシロップにまみれたふわとろのパンをぱくついていたら、  「お弁当はいらないらしいけど、みんなで食べてね」  智春さんが大きな紙の箱を持ってきた。  「ひゃあ、これ朝焼いたの?」  あたしは驚いた。真っ白なパンがぎっしりだ。小さめサイズで、ひとつひとつが半分ずつカラフルな紙でくるまれてる。
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