第1章

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 あとであんなが説明してくれたけど、あたしたち三人はいっしょにごろごろ丘を転げ落ちて、途中でぽおんとはずんで、またごろごろ転がってずっと下まで落ちて、小川の縁でやっと止まった……と思ったら、  ばしゃーん!  かたまりになって水へ落っこちた。  あたしたちは悲鳴を上げながら、小川から上がった。  「つべ、つべ」  「冷てえー」  「あわわわわ」  かわいい小川の水はまるで氷水。止まるとかちんこちんに凍っちゃいそうだし、動くと風が起こってもっと寒い。あたしたちは狩りに出かけた大急ぎのカメレオンみたいな動きで、腕をかかえて足踏みする。  あんなとエカキが山のようにバスタオルや毛布を抱えて、丘を下りてきた。  それにくるまって、がちがちあごを鳴らした。  「早くあったかいシャワーを浴びたほうがいい、風邪ひいちゃう」  あんなにいわれて、とぼとぼ丘を上ろうとしたら、まだカイとエースがもめている。お互いのバスタオルをひっつかもうとする。  「もう、なんだっつうのー」  あたしは戻って来て、ふたりの頭をはたいた。  エカキが肩をすくめる。  「ぼく半分寝てたんだけど、なんかベッドの場所とか、領土を侵害したとかなんとか」  「小学生か、ばかもの!」  あたしはまたふたりの頭をはたいた。 △  シャワーを浴びて着替えてから、あたしは男子部屋を見に行った。  「ぼくが悪かったよ、だから」  カイが叫んでる。またもめてるよ、おい。  「なんなの」  エカキが困り切った顔で、あたしを振り向く。  「あ……エースが、着替え持ってきてないから、シャワー浴びないって」  「だから服なら貸すっていっただろ!」  カイがいらついた声を張る。  あたしはエースを見て驚く。さっきと同じ、どろどろに濡れた服のままだ。  「エース! まじで風邪ひくって」  エースはあたしを見ないで、自分のバッグを拾い上げた。  「もういい、みんなには迷惑かけない!」  パオを出て行こうとする。  「エース!」  肩をつかんだけど、振り払われた。  「ここどこだと思ってるの? 一人で帰れるわけないよ?」  つかまえようとしたけど、ひらりと身をかわしてパオを出て行く。  追いかけようとしたあたしに、  「みずき!」  カイが叫んだ。  「あんなやつほっとけって、わけわかんない」  こんなにふうに感情をあらわにするのは久しぶりだ。  あたしはカイを振り向いて、
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