第1章

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 「確かにわけわかんない。でもほっとけない。あの子もいろいろあるんだから」  外へ出ていく。    ぐるぐる探して、やっとエースの背中を見つけた。車で入って来たとはまるで逆の方向へ向かってとぼとぼ歩いてる。  「なんだよ、行き先なんてないくせに」  あたしは歯を食いしばって駆け出す。  たちまち追いついて、  「おらあ」  ラグビーのタックルみたいに、足をつかんで転ばせた。  「なにすんだよお」  エースは怒りの声を上げたけど、抵抗せずにその場に座りこんだ。  「逃がさないからねえ」  「わけわかんねえ」  ほっぺをふくらましたけど、顔を上げてはっと顔色を変えた。  あたしも振り返る。  「ありゃ、体は平気なの?」  エカキは大きなデイパックを背負っていた。真っ赤な顔ではあはあ肩を揺らす。目にいっぱいの涙をためていた。  「ごめんよ、しげる……ぼくが無理に誘ったばっかりに」  細いひざを折って、あたしたちといっしょに座りこむ。  「なんで、おまえが謝るんだよ、おまえは黙って寝てろよ」  エースの声はきまり悪そうで、だんだん小さくなる。  「おれだって、行きたかったから来たんだ……こういうの、行ったことなかったし」  エカキはデイパックを下ろし、中に手を突っこむ。  「あのさ、これ使ってよ。ぼくいっぱい持ってきすぎちゃったからさ」  長袖Tシャツやジャージやらがつまったビニルパックを取り出した。それから、くるくる巻かれた大きなものも。  「寝袋も使いなよ。これなら外でもあったかいから」  「お、おう」  エースは素直に受け取る。やっぱり寒いんだ。こいつ、小刻みに震えてるし。しかし、なんで寝袋?  エカキは泣き顔をごしごしこすり、むりやりにっこり笑って見せた。  「あっちの森の中で着替えてきたら? それから帰ってきなよ」  「お、おう」  着替えを抱えて、エースは森の中へ入ろうとする。  「エース、そっち行っちゃだめって鴎さんが……」  いいかけたあたしの腕を、エカキが引っ張る。  「みずき、大丈夫だから。エースはちゃんと着替えて戻ってくる。ぼくたちは先に帰ってカイの話を聞いてあげよう。あの子、いろいろ勘違いして怒ってるだけだから。なだめられるのはみずきだけだよ」  「ええ、どゆこと?」  勘違いも何も、あたしにはまったく状況がわからなかった。 △
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