第1章

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 あたしとエカキが帰ってくると、カイが完全にぶんむくれていた。  ベッドの上で、ひざをかかえている。  「かーいくん」  あたしが声をかけたら、もぞもぞもぞ動いて向こうを向いちゃった。  「……めんどい、非常にめんどい……」  あたしはふん、と鼻から息を吐いてから、エカキを見た。  「そういえばさ、エカキは元気になったね」  エカキはにこっとした。  「なんか、寝てる場合じゃなくなった」  「「あはは」」  いっしょに笑う。  あたしはちらっと、ベッドの上を見た。  「ねえねえ、なんかあったかいもの飲みたくない?」  「飲みたいですねえ」   エカキもちらっと見る。  「さっき、あたし水に落っこちちゃったじゃん? ここであったかいの飲んだらいいよね」  「そうだね、紅茶なんかいいよね」  ちらっ。  「でも、ここじゃどうやってお湯沸かすのか、わかんないもんねえ」  ちらっ。  「おやつもまだ全部食べてないし、食べたいな」  ちらっ。  「食べたい食べたい」  ちらっ。ちらっ。  カイの背中がぴくぴく震えている。  そこへ、あんなが飛びこんできた。  「ねえねえカイくん、あっちにいろいろ道具があるんだけど、使い方がわかんないの。お湯沸かしたいんだけど、見てくれる? あ、みずきどこ行ってたの? エカキくんも大丈夫?」  「うん、大丈夫」  「あんな、道具ってどんなの?」  ちらっ。ちらっ。ちらっ。  「あーーうるせーうるせー!」  やっとカイが振り向いて、  「おれだってここ初めてなんだからわかんねえよ、どこだよ」  ベッドから下りて、ぶんむくれた足取りでパオを出ていく。  あたしとエカキは顔を見合わせて、にこっとした。  あんなが見つけた場所が、キッチンダイニングらしい。  屋根だけのテント(タープっていうんだって)の下に、テーブルやいすが置いてある。外なのに、いすはパイプとかじゃなく、ちゃんと布のソファっぽいし、テーブルは重厚な造りで、真ん中に陶器のタイルがはめこまれている。  「きゃー、かわいい」  あんながすかさず写真を撮る。  そばには大きな長四角のグリルや、鍋をかける道具がセットされている。  「ここに炭を入れて、煮たり焼いたりするんだね」  「炭や水は鴎が持ってくるんだ」  「それまで、お湯も沸かせないの?」  「見て見て」
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