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あたしとエカキが帰ってくると、カイが完全にぶんむくれていた。
ベッドの上で、ひざをかかえている。
「かーいくん」
あたしが声をかけたら、もぞもぞもぞ動いて向こうを向いちゃった。
「……めんどい、非常にめんどい……」
あたしはふん、と鼻から息を吐いてから、エカキを見た。
「そういえばさ、エカキは元気になったね」
エカキはにこっとした。
「なんか、寝てる場合じゃなくなった」
「「あはは」」
いっしょに笑う。
あたしはちらっと、ベッドの上を見た。
「ねえねえ、なんかあったかいもの飲みたくない?」
「飲みたいですねえ」
エカキもちらっと見る。
「さっき、あたし水に落っこちちゃったじゃん? ここであったかいの飲んだらいいよね」
「そうだね、紅茶なんかいいよね」
ちらっ。
「でも、ここじゃどうやってお湯沸かすのか、わかんないもんねえ」
ちらっ。
「おやつもまだ全部食べてないし、食べたいな」
ちらっ。
「食べたい食べたい」
ちらっ。ちらっ。
カイの背中がぴくぴく震えている。
そこへ、あんなが飛びこんできた。
「ねえねえカイくん、あっちにいろいろ道具があるんだけど、使い方がわかんないの。お湯沸かしたいんだけど、見てくれる? あ、みずきどこ行ってたの? エカキくんも大丈夫?」
「うん、大丈夫」
「あんな、道具ってどんなの?」
ちらっ。ちらっ。ちらっ。
「あーーうるせーうるせー!」
やっとカイが振り向いて、
「おれだってここ初めてなんだからわかんねえよ、どこだよ」
ベッドから下りて、ぶんむくれた足取りでパオを出ていく。
あたしとエカキは顔を見合わせて、にこっとした。
あんなが見つけた場所が、キッチンダイニングらしい。
屋根だけのテント(タープっていうんだって)の下に、テーブルやいすが置いてある。外なのに、いすはパイプとかじゃなく、ちゃんと布のソファっぽいし、テーブルは重厚な造りで、真ん中に陶器のタイルがはめこまれている。
「きゃー、かわいい」
あんながすかさず写真を撮る。
そばには大きな長四角のグリルや、鍋をかける道具がセットされている。
「ここに炭を入れて、煮たり焼いたりするんだね」
「炭や水は鴎が持ってくるんだ」
「それまで、お湯も沸かせないの?」
「見て見て」
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