第1章

20/34
前へ
/34ページ
次へ
 あんなが近くに大きな箱を見つけた。ふたを開けると中は棚になっていて、食器や鍋、カトラリーやランプなどがきちんと収納されている。  「テーブルセットならできるよ」  あんながいって、ランチョンマットをテーブルに置き始めた。  「いい雰囲気じゃん」  ほうろうのカップやお皿をそれぞれ配置しながら、あんなはあたしに命令する。  「みずき、おやつの残り持ってきてよ」  「ラジャ―」  「カイは飲み物余ってない?」  「うん、あるはず」  あたしとカイが走りだそうとするのを、エカキが腕で止めた。  「ほら来た」  ポットやお菓子の包みを腕いっぱいにかかえて、エースがとことこ丘を下って来る。  一番端っこどうしだけど、エースもカイもちゃんと座って、お茶会が始まった。  紅茶はカップに半分ずつ、それもだいぶぬるいけど、おやつはまだたくさんある。  「すてきねえ」  あんなは夢見心地だ。テーブルにひじをついて、風になびくタープの向こうに目をやる。  日はほんのりオレンジ色がかり、だいぶ傾いた。森の木々からちらほら落ち葉が舞い落ちる。  「光がどんどん変化して、追いつかない」  エカキはさっきから自前のタブレットでスケッチしている。  カイとエースはぶすっと黙って自分のカップを見つめる。  「ほうふぁ!」  あたしはお菓子をほおばったまま、ぴょこんと立ち上がった。  「ひャッひボールひようよ! 暗ふなっはらでひねえっつうの。あはしボールとグラブとバッふぉ持っへきふぁー」  叫びながら自分のパオへ一直線に走った。  車が帰って来た時には、ミニゲームがたけなわだった。  「ようし、この魔球を受けてみよ!」  あたしは叫んで、実はストレートの剛速球を投げこむ。  「がはっ」  変な声を上げて、カイはやっとこ当てたけど完全に振り遅れ、高い高いフライになった。  「オーライ」  キャッチャー役のエースがあたしを手で制して、落下地点に立つ。  「ちぇ」  カイは悔しそうだったけど、フェアだからバットを投げ捨てて走る。  「あ、足もと気をつけて!」  叫んだのは鴎さんだ。  エースはぎょっと下を見たけど間に合わなかった。ちょうど大きな岩があって、それを避けようとしてずるんとすべった。  「「「「ああああ!」」」」
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加