第1章

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 火が通るうちに肉汁がたれて炭火がじゅうじゅううたいだし、ほたてやソーセージ、牛肉の匂いの煙があたりを包む。ダッチオーブンからカレーの香りも流れてきて、うう、たまんない。  皿やカトラリーを並べたり、調味料を入れたりかき混ぜたりしながらも、みんなの視線はじいっとグリルに集中する。  「そろそろいいかな?」  鴎さんが肉の串を傾けて様子を見る。  「いい! いい!」  カイがテーブルをどんどんたたくのを見て、エースが笑った。それを見て、あたしとエカキとあんなは顔を見合わせて、やっぱり笑った。  とうとう焼きあがった肉を鴎さんが持ってきた。どすんと、串をテーブルの中心に立てた。まずはエースにトングを持たせる。  肉にナイフを入れて、  「切れ目をトングでつかんでください」  そのまますいすい切り落とした。  その調子でみんなほしいだけ肉を切ってもらう。お肉だけでもしっかりした塩味でとってもおいしんだけど、甘酸っぱい野菜ソースをかけるともっともっとおいしい。  みんなで努力したかいがあったもんだ。  「このカレーご飯、ぱらぱらでとてもおいしい」  エカキも気兼ねなくすべての料理を食べた。  でも一番たくさん食べたのは、あまり働かなかったあたしのおじさんだと思う。    「では、今度はデザートを」  鴎さんが、今度串に刺して持ってきたかたまりは黄色い。  くんくん匂いをかいだあんなは、きゃっと悲鳴を上げた。  「これパイナップル? 焼くの?」  「はい、ご名答です」  焼きパイナップルもトングでつかんで切ってもらう。  「甘―い!」  生で食べるのと違って全然酸っぱくない。それでいて口中にさわやかなジュースがあふれだす。ナイフですいっと切れるのも楽しい。  「これ食うと、また肉が食いたくなっちゃうな」  カイが無限ループに突入している。あたしもだ。  「パイナップル酵素が肉のたんぱく質を分解するから、実質0カロリー」  ひぐっちゃんがいうと、みんなげらげら笑った。あんまりにも楽しくておいしいので、笑いのハードルがド低いのだ。  デザートの部は続く。焼いてとろけさせたマシュマロとチョコをビスケットをはさんで食べるやつなんて、もう罰当たりみたいな味だ。  「はあ、純真だったあたしを返してほしい」  ほっぺが落ちないようにおさえながらあたしがつぶやくと、  「ほんと、この味を知ってしまったら、もう……」
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