第1章

23/34
前へ
/34ページ
次へ
 と、あんなも同じポーズでとろんとした。  「大豆でできたマシュマロなんて知らなかった。おかあさんに買ってもらう」  エカキも同じメニューでうれしそうだ。  「ふう、もう一口も入らねえ」  ため息をついて、空を見上げたエースが、  「おわーっ!」  いきなり大声を上げた。  「うるさいなあ」  あたしが顔をしかめると、エースはさかんに空を指さす。  その指を伝って見上げて、  「わわわーー!」  もっと大声であたしは叫ぶ。  「どしたどした」  みんなタープから出てきて、空を仰いだ。  ……これ、ほんとうに、星?  プラネタリウムでもこんなの見たことない。広い広い空間に、銀色の砂をばらまいたみたい。こういうのを「満天の星空」っていうのかな。  「……こわい」  あんなが鴎さんにすがりつく。鴎さんは微笑んで、あんなの肩にそっと手を置く。  その気持ち、あたしにもよくわかる。あんまりにもきれいなものを見ると、心が震えて、とてもとても怖くなるんだ。  あたしも、近くのおじさんの腕にしがみついた。  白っぽい目でちらっと見たけど、珍しくひぐっちゃんは「くっつくな」とはいわなかったよ。 △  後片付けも、そのあとのぐだぐだゲームタイムも楽しかった。  気がつくと、エカキが頭をこっくりこっくり揺らしている。  鴎さんが立ち上がる。  「もうお休みになりますか? 大浴場に行きたい人は車で送りますよ」  「大っきいお風呂行く行く」  あたしとカイとあんなが手を上げる。  「エースも行こうぜ」  カイがごくふつうに誘った。  「そうだよ、あんたまたどろどろじゃん」  あたしもいったけど、エースは首を横に振って、  「ううん、先に寝る」  半分寝ているエカキ(たぶん、途中から寝たふり)の肩を担いで、パオへ向かった。  お風呂も広くてぴかぴかですてきだった。  空には、いよいよ降って落ちそうな星々。  草の匂いの夜風がさわやかに吹き渡る。ほてった体には心地いい。  生乾きの髪を揺らしながら、あたしたちはぶらぶら車へと歩く。  あんなと鴎さんが並んで先を行く。ふたりはときどき顔を見合わせひそひそ話し、くすくす笑う。  いつもは男の人を見ると、すぐ真っ赤になっちゃうあんななのに、さっきからずっと鴎さんにくっついてる。  「鴎は、見た目もしぐさもやさしいからね」  あたしの隣でカイが訳知り顔にいう。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加