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「サンキュー、さすがだな」
エースはぶすっとそっぽを向く。
「仕切んじゃねえよ、金満坊やが」
カイのどこからか、「ぐふっ」っとかすかな音で息がもれた。
あたしは横目で見ていた。
カイは耐えた。
エカキが近くの木を見上げる。
「これは赤松じゃないかな」
「ってことは……」
あたしとあんなは声を合わせた。
「「松茸!?」」
さっそく松葉の積もった地面に集中する。
「松茸っておいしいの?」
気のないふうにエースが聞く。
あたしは必死で松葉をかきわける。
「知らない、食べたことないもん。でも高いんだよ、何万円もするやつもあるんだって」
「へえ、なら探す」
エースもしゃがんで探し始める。
「だって、おれなんて、ここで見つけなきゃ一生食べられないからな、誰かさんと違って」
とあからさまにカイを見る。
今度はカイは耐えなかった。
「おい! おれが何したっていうんだよ!」
立ち上がって鋭く叫んだ。
エースもまっすぐ立つ。
「別に。好きな女の前でカッコつけてるだけだろ……親の金で!」
「おれは平和を希求するが、いわれなき侮辱とは戦う!」
まっすぐ、エースに駆け寄る。
やっぱカイって変わってるなあって、あたしはぼうっと思った。テスト問題が配られて一個も解けそうなのがなくて、「ああこれはお手上げだ」みたいな感じ。
そんなぼうっと加減で、ふたりの取っ組み合いをながめていた。
「みずき止めて!」
あんなも、
「やめなよ!」
エカキも必死に叫んでいるけど、あたしはちょっと動く気にならない。
でも0.5ミリくらい「あたしのせい?」と思っちゃって、あたふた頭の中の黒板の文字を消す。いくらあたしがばかだろうと、身の丈ぐらいわきまえているって。
でも、0.4ミリ弱でもあたしの思ったとおりだとしたら、介入すると流れ弾に当たる展開じゃん……絶対にかかわらないでおこうと、心に決めた。
そのせいかケンカは終わらず、エースとカイとはおもしろいくらい長い間取っ組み合っていた。だんだん引っかいたりかみついたりに移行してきて、あんまし少年マンガ的には絵にならない。
さては、ふたりともそんなに強くないな。そのうちHPが尽きてやめるだろう。
△
すっかり飽きて、あたしは森の奥へ視線をやる。
「……ん?」
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