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午前中に釣ったマスは、おいしい炊き込みご飯になった。
「これなら全員で食べられるね」
ワカサギのフライもあるし、きのこのグラタンにアヒージョにお味噌汁、山菜の天ぷらやおひたしなんかがぎゅうぎゅうテーブルに並ぶ。
結局、あたしたちは一本のきのこも、とらなかったんだけど。
「熊汁が食べられないのは、惜しかったなあ」
あたしが笑うと、鴎さんは真剣な顔になる。
「冗談ではありませんよ、みずきさん。話を聞いて肝がつぶれました。熊に立ち向かっていくなんて。もう二度とやらないでください」
そんなシチュエーションそうそうねえから、とは思ったけど、あたしはまじめな顔で謝った。
「ごめんなさい」
「でもまた伝説作ったな、おまえ」
「すげえ、尊敬する」
カイとエースがにやにや笑う。
「あーあ、面白かった。また行きたい」
帰りの車の中、みんなと別れてからも、あたしは何度もつぶやく。
「おまえ、ばかじゃねえの」
ひぐっちゃんはあきれ顔でステアリングをにぎる。
「鏡子やタマにいうなよ、ばか」
「いわないって、智春さんなんて気絶しちゃう」
鴎さんからは、決して他言無用といい渡された。
ばかばかいわれても、あたしは腹も立たない。笑いをがまんしながら、運転席をちらちら見る。
「あのあとエースとカイ、仲良くなったじゃん? ケンカもしなくなったし、エースお風呂は行かなかったけど昨日はパオで寝たし。あれってさ、熊のおかげだよね」
なんであんなにエースがカイにつっかかるのか? その理由は、結局わからなかった。
まあ、はっきりとした一個の理由じゃないんだろうな。エース、家の中はいろいろ大変そうだから、お金持ちのカイが気に食わなかったとかそんなとこだろう。それか、もしかしてもしかすると、恋のライバ……。
「いやいやいや、ないないない、何いってんのはっはっは」
あたしはくだらない思いつきを笑い飛ばした。
「おまえ、なんか変なきのこ食った?」
ひぐっちゃんは、割に本気の心配っぽく聞いた。
「いやいやなんでもない……それはそうと、なんだっけ? 心理学であるんでしょ、共通の、敵の存在や危機体験が集団の結束を固くする、ってやつ」
ひぐっちゃんは黙ってサングラスをかけた。
がまんしきれなくて、あたしはくすくす笑っちゃう。
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