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「あの場面で熊が出るのって、めっちゃ共通の危機体験だよね? その結果、あたしたちの結束はがっちがちに固まった」
返事はないから、あたしはひとりでしゃべる。
「で、昨日のご飯のあと、あたしメインラウンジにお風呂行ったんだよね、そしたらさ、ロビーに飾られてたの、真っ黒な……わっ!」
急ブレーキがかかって、あたしの肩でがちんとシートベルトが止まった。
「あああ、ばかやろー轢くぞこらあ」
ひぐっちゃんは棒読み気味に叫んだけど、道路はがらんと広くて通行人も対向車も見当たらない。
「うふふ」
あたしは体の力を抜く。ちょこんと、ひぐっちゃんの肩に頭を預けた。
「くっつくな、ばか」
いったけど、ひぐっちゃんはあたしをどかさなかった。
「ありがとうね、ひぐっちゃん」
「なにが」
ぶすっと前を見つめている。
「だって、ほかにばかな人がいたら、自分が多少ばかでも気にならないでしょう?」
また黙ってしまった。
「そいでごめんね、ここ、だいじょぶだった?」
あたしがぐいっと頭に力を込めると、
「痛って!」
ひぐっちゃんはその場でわずかに飛び上がった。
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