まえがき

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私は小説が好きだ。特にフィクション、ファンタジーが大好きだ。それは、もう、本当に。 だから、自分でも書きたいと思うようになったのはごく自然のことと言えよう。 今から60年前、私は執筆を開始した。 そして挫折した。 こんなに好きなのに、頭の中にはアイデアが浮かぶのに、筆が進まなかったのである。 細かい描写になると書けなくなり、深みがなく、リアリティが出なかった。フィクションだとはいえ妄想で補うには無理があった。原因は明白だった。当時20歳という若さでは知識も経験も圧倒的に足りていなかったのだ。 小説家として食べていきたかったわけではない。ただ、自分が書いたものを、そう、小説が好きで好きでたまらないこの私が書いたものを皆に一度見てほしかったのである。そしてそれは完成度の高いものでなくてはならない。 だから、私はこの人生を、最初で最後、唯一にして最高の1冊を書くために捧げようと決めたのだ。 21歳の夏、私は旅に出た。 そして昨日、世界を回り終え帰途についた。 これからお届けするのは、人類史上最大規模のスペクタクル巨編である。 手に汗握るアクションシーン。 個性的な登場人物が繰り出す、笑いあり感動ありのヒューマンドラマ。 腹はよじれ、涙は枯れ、紙は手汗でびちょびちょになるだろう。 謎に次ぐ謎。 伏線に次ぐ伏線。 全てが最後に結び合わされるとき、思わず呼吸を忘れることだろう。 ――この作品を全ての小説好きに贈る。
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