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過去のお話
昔、みきの家族は両親と八つ上の姉、七つ上の長兄と二つ上の次兄そして末っ子のみきを合わせた六人家族だった。
みきの家族は世間一般の常識とはかけ離れたものであった。
諸悪の根源はみきの両親。
みきの両親は男性アルファと男性オメガの番。二人はとても仲睦まじい夫婦で、互いのことを何よりも愛していた。
何よりも――――つまり自分たちの子供よりも。
両親にとってみきを含めた計四人の子供はセックス及び妊娠・出産というイベントを二人で堪能する際に発生した副産物だった。
そんな価値観を共有していたのはこの夫婦の並外れた調和性の賜物だろう。
両親は生まれてすぐの子供をベビーシッターに預け、同じ家にいるのに子供の頭すら撫でたことがない。
だけど、兄弟それぞれに両親は必ず一度は言い聞かせる話があった。
みきを含めた兄弟にとっては、両親なんていても居なくても同じ人たちでしか無かったけど、この親からの言葉は兄弟全員の生き方を縛り付けるものとなった。
みきに両親がそれを語ったのは、姉が死んだ日のことだった。
オメガの姉は十三歳にして番が出来た。
相手は五十も年上の男性アルファで、姉の運命の番だったそうだ。
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