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「待っててくれないか?」
そう言って、旅立っていった彼。私はその時、ドキドキし過ぎて顔を上げることが出来なかった。そして彼は行ってしまった。それって将来のプロポーズ?
それから5年。中堅と呼ばれる年齢が近づいてきた。
久しぶりの同期会が開催される。彼も日本に帰って来たらしい。
メールもラインも最初の1年くらいで途絶えてる。わかってる。もう終わっていることくらい。でも彼の他に付き合ってみたけど、その度に彼の一言が私の気持ちを思いとどまらせてきた。
待つって何を?
多分、私の中の何かが止まってしまっている。彼を待つために。意味のない待機期間。
懐かしい面々。見た目も人によっては様代わり。
お前は誰だと言いたくなる同期もちらほら。
遅れて現れた彼。
まだドキドキするんだな、自分に呆れちゃう。
近況報告タイム。
彼は国際結婚、将来モデルも出来そうな可愛い女の子の写真、パパになったんだ。
1次会が終わって、帰路。私、何しに来たんだかな。
駅に向かう途中、彼から声がかかる。
「仕事、頑張ってるんだって」
「まあね」何それ、どうせ他にやることありませんからねと心の中でつぶやいてみる。
「お前にふられて、勢いで結婚してさ」
「???私がふったの????」私のリアクションの薄さと熱のないメールのやりとりのせいだと彼は言う。
私は自分の気持ちを素直に言葉にできなかっただけなのに、行かないでとも一緒に連れてってとも言えなかっただけなのに。
「やっぱり勢いだけだと破綻も早いというかさ」
えっ、何?今度は離婚の話?子供の写真うれしそうに見せてたじゃん。
「仕切り直しで帰国しちゃいました」
何なの、なにのんきなこと言っちゃってくれちゃってるの?人の気持ちも知らないで。
「ずっと待ってたのに」
今度こそ、ちゃんと伝えなきゃ。また待ち続けるなんて嫌だ。私は待つのが嫌いです。
「私、今度海外赴任を打診されてて」今日、会社からあった異動の話。
「今度は私を待っててくれる?」
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