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ファンタジーというジャンルは、複雑な知識が必要なく、また堅苦しさもないため好む若者は少なくないとされている。ライトノベルの主流もファンタジーか現代ファンタジーであるはずだ。異能力者バトル、魔法使い、異世界トリップ、妖怪バトル、とにかくその他もろもろ全て大別すれば“ファンタジー”に分類されるはずである。
そういったファンタジーが好まれるのは、若者たちの“現実の世界への不安や物足りなさ”も起因するのではないだろうか。現実の、辛く退屈な仕事や学校から逃れたい。平凡な自分を脱却したい。自分もまた、選ばれた特別な存在だと妄想してみたい――。それらを突き詰めていった結果、ファンタジーの中でも異世界転生やその結果のチート無双展開が大流行したわけなのだろう。
特に“作家になろう!”のサイトでは“転生したらチートでした”はもはや完全にテンプレートだ。そのチートというのは“物理的に強い”から“ハーレムや逆ハーレム的なチート(モテモテ愛され系)”まで多岐に渡り、最近では転生先が“魔王”や“悪役令嬢”というのが大変なブームになっているらしい。スターライツでもまた、少なからずそういった物語を掲載しているWeb作家は存在している。
――そう、恐らく審査員側もそれはわかってるわよね。異世界転生をテーマにすると来たら…基本的には“転生したらチートな●●”が来るって。
同じ系列を書いたとしても、自分なら高い水準のものを書ける自信がある。むしろ、テンプレート展開を踏襲するからこそ、地力の差が浮き彫りになることだろう。だが。
――念には念を入れて…変化球を用意しておいて本当に良かったわ。私は五ツ星の星野愛良…ただ受賞するだけじゃダメなのよ。あのマルイタカヤに圧倒的な力の差を思い知らせた上、大賞を取って私こそが頂点だとみんなに知らしめなければならないんだから…!
自分との勝負に負けたからといって、マルイタカヤがスターライツを絶対引退しなければならない決まりはないだろう。悔しいが自分は運営にコネなどない。例え通報してアカBANを狙ったところで、正当な理由がなければ受理などされないに決まっているのである。
なら、あのタカヤが自ら――Web作家をやめたくなるほど完膚なきまでに叩きのめすしかない。それが出来るのが自分の力だと愛良は確信していた。
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