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 そもそも、愛、をテーマにした時点で、恋愛モノが多く投稿されることになるのは眼に見えている。それでも恋愛モノに拘るのなら、それを越えていくインパクトとアイデアを出さなければ審査員の目に止まることなどないというのに。 ――そうよ、だから今回も私が圧勝できるはずだった!私の作品に、勝てるヤツなんて誰も現れやしないはずだったのに!!  こいつは、いつからそこにいたのか。  信じられないコンテスト結果。どうして『恋愛探偵メアリーヌ』が――準大賞なのだろう。  なぜ、なぜ、なぜ!その上の大賞に――もう一作品があるのか! ――『処刑台の魔女』…マルイタカヤ?誰よこいつは!!  思わずそいつのプロフィールページに飛んで確認する。マルイタカヤ――性別が男性で、事務員ということしか書かれていない。プロフ画像さえ設定されていない。見れば、登録日時は今回の短編コンテストの募集が締め切られるギリギリではないか。つまり、登録されて一ヶ月も過ぎていない。新人も新人、ド新人だ。確かに締め切りギリギリに投稿された作品で閲覧数が最底辺クラスなら、自分が存在に気がつかないのは当然のことではあるだろうが――。 ――こんな新人にこの私が!五ツ星の書籍化作家、“星野愛良”が負けたっていうの…!?ありえない…ありえないありえないありえない!!  聡子は机を思いきり叩いて立ち上がった。  断じて認めるわけになどいかない。スターライツの頂点に立ち、このサイトで最も人気のあるweb作家である自分の前に立ち塞がるなど――言語道断だ。それが、ポッと出の新人であるなら尚更。 ――礼儀を知らぬボクちゃんには…躾が必要ね…!!  見ていらっしゃい、と聡子は気炎を上げる。 ――必ず潰してあげるわ…マルイタカヤ!!
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