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「おーい、順平クン?大丈夫かー?」 「…ほええ……」  ファミレスに着いてからずっと、順平はこんな様子である。短編コンテストの結果が発表されたのは丁度昨日のことだった。まさかいきなり大賞を貰うとは思わなかったのだろう。順平は完全に魂が抜けたような有り様と化している。  まあ無理もないわな、と優は思った。長年web小説を投稿してきて、それが一度も陽の目を見るようなことのなかった順平である。そればかりか、二次創作を書いていてさえランキングに乗ることさえ一度もなかったはずだ。それがいきなり、スターライツ初投稿作品が大賞。夢でも見てんじゃねえか、と疑いたくなるのは無理もないことだろう。 「…僕の仕事、定時は18時なんだよね…」  半分真っ白になりながら、順平が言う。 「でさ…多分、コンテストの結果発表もそれくらいの時間だったんじゃないかなあとは…思うんだけど…」 「うん」 「発表されてることに気づかなくさあ…プロフの足跡履歴が異様に増えてるのに先に気がついてさあ…。やばい、また掲示板に晒された!って最初思ってびびっちゃったんだよね…」 「…あー……」  順平は過去、まだ個人サイトを中心に投稿していた時代に、そのサイトを同人系のオチスレで晒されたことがある。その時一気にしょぼかったカウンターが回りだし、ブログには中傷コメントが書き込まれ、非常に怖い思いをしたことがあるのだ。  まあ、正直あれは、餌をやってしまっていた順平にも問題はあったと思うのだが。今でこそそれなりに強メンタルに見える順平だが、昔の彼は高校を過ぎてもかなり厨二病を拗らせていた上、ブログではネガティブなことをたくさん書いてしまっていたのだ。そのブログが繋がっているサイトの小説も、連載していたのはいわゆる“メアリー系”が無双するような俺TUEEEE系小説である。――人のサイトや個人を晒しあげて集団で叩くような連中に共感などできないが。順平も順平で、自衛が足りていなかったのは事実なのだろう。  人気がなくても構わない、書きたいものが書ければそれでいい――なスタンスの順平だが、人気をほとんど気にしなくなったのもここ数年のことだと知っている。ことごとくマイナーCPばかり好きになって需要も供給もない状態だったので諦めた、というの理由だったようだが。
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