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 人気はなくてもいい。でも、それでもやはり誹謗中傷の声はやはり怖いらしい。まあ人間ならそれが当然だろうなと優は思う。むしろ――最初の個人サイトを晒された時点で、よくぞ筆を折らなかったものだ、とさえ思うほどだ。 「でもなんかよく見たら晒されてるんじゃなくて、コンテストの結果発表されてて、大賞だったから見に来てくれた人がいっぱいいだったいう…。あ、ありがたい話ではあるけどびびるよ…!ページ更新するたび新しいイイネが来てるし、一桁だった閲覧数がいつの間にか四桁になってるし…!!」  いいのかなあ、とテーブルに突っ伏す順平である。 「僕自身も、なんで大賞取れたかわからないんだよ…賞金まで貰っちゃったし。絶対ラッキーパンチでしかないと思うんだけどさあ…」  自分の書きたいものを書く意思は強いが、根っこは臆病で内気な彼だ。信じられない気持ちと、まだ何かの間違いだったのではないかと疑う気持ちでごっちゃごちゃになっているのだろう。――まあ、そうそう調子に乗らないのは彼のいいところではあるのだが。 ――ていうか、こいつあの短編、通勤電車に乗ってる数十分だけで考えて書いたつってたよな…。  優は少し――苦い気持ちになる。  元々優も小説を書いていたのだが、最近はスランプと忙しさですっかり遠ざかっているのだった。一度“書けない”となってしまうと長いのが優である。別に趣味で書いているだけなのだし、書けなくても焦る必要はないと知っているが――。  目の前の順平を見ていると、少し焦燥を抱いてしまうのも事実なのだ。彼はどこまで自覚があるかわからないが――実のところちょっと見ないくらいには速筆だと知っている。仕事がない日なら、一日に二万文字くらい書くことも可能なのだそうだ。速さだけなら某プロ作家並だろう。そして、ネタを思い付いてから書き始めるまでのスピードも妙に早いのである。
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