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「お前の『おばけ会議』は何がダメだったかわかるか?俺個人は面白いと思ったけどさ。面白い、笑えるギャグ…ってだけで、後に残る印象がなんもねーんだよ。あと、いくらギャグだからって必要以上にモブ増やすな。読者は把握しきれないからな?」 「それはちょっと…俺も思った…」  結局、キャラクターが多く勢いだけのコメディになってしまったのは事実だ。しかも、夏らしさが全然出せなかった。夏は怪談の季節です!だからオバケも会議します!だけでは色々弱すぎたように思う。 「その次の短編コンテスト、テーマは『猫』だった。大賞を取ったのはミステリーの絶対王者、五ツ星の銀時計。このコンテストに、星野愛良は応募しなかったみたいだな。…まあ、銀時計の話は凄かったよ。あの文字数でよくぞあそこまで綿密な密室トリックとオチを用意したもんだと思うわ。けどそれ以上に…お前の話が論外だったのは言うまでもないな?」  仰る通りです。順平は沈むしかない。  気になる中学生の少年を追いかける女性、その正体は実は猫だった――というほのぼのオチの恋愛短編だったのだが。 「オチがテーマの時点でバレバレ。話自体は嫌いじゃねーけど“猫”のテーマで猫をオチにしたら意味がねーだろ。いや、テーマを生かそうとしたのはわかる。でも意外性を自分で殺してる」 「だよねえ…」 「もうわかってると思うけどな。…お前が星野愛良に勝てるとしたら、ネタの意外性しかないんだ。文章力でガチ勝負とかムリなのわかってるだろ。勝ち目があるならそのアイデア!オタクの妄想力活かしてマジで戦うしかねーんだよ、わかるな?」  わかっている。順平は顔を上げて――今回のコンテストの趣旨を思い出していた。  ファンタジーコンテストも毎回テーマが決まっていて、時には主人公の縛りがかかる。  今回のテーマは女主人公。  そして異世界転生――だった。
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