7話「マスターからの手紙」

5/13
前へ
/127ページ
次へ
「池田さんの言う通り。所有者の意思によって、親族ではない方に土地や店舗の所有権を譲ることは可能です。あくまで意思を証明するものがあれば、の話ですが」  先生は丁寧に教えてくれた。 「それは・・・・・・遺言ということですか?」  畳みかけるように尋ねれば、先生は頷いた。 「ええ。開封していない遺言書があると良いでしょうね。もしそこに土地や建物の後継者についての記載があれば、親族でない方でも後を継ぐ権利が生まれます」  やはり店で三人で話した通りだ。  オーナーの(自称)親族からフクパラを守るためには、葉さんが正式に店の所有権を勝ち取るしか方法は無い。 (そのためには、何としてでもマスターが葉さんに店を譲ることを示す証拠を探さないと・・・・・・) 「池田さん? 大丈夫?」  深く考え込んでしまっていたところを、先生の声で我に返る。 「あっ、すみません。ありがとうございました」  先生にぺこりと頭を下げてお礼を言うと、私は小走りで教室を後にした。
/127ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加