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◇
今日の全ての授業を終えて店へ戻ると、閉店した店で四人が夕飯の用意をしているところだった。
キッチンからハルさんの作るカレーの良い匂いが漂う。
私は椅子に座って伝票を作成していた葉さんに、先生から聞いて来たことを洗いざらい話した。
「遺言書?」
私の言葉に、葉さんは困ったように眉をハの字に下げる。
「そんなものはもらってないよ」
「あるはずなんです。先代の方はきっと葉さんに遺しているはずです。遺言書が見つかれば、フクパラを守ることができるかもしれない」
慌てて答えれば、葉さんはぐるりと店内を見回す。
「とは言え、フクパラをオープンさせるに当たって一通り掃除はしたからなあ。マスターの遺品整理も俺がしたし・・・・・・」
残念ながら思い当たる節は無いようで、彼は首を傾げたままだ。
彼の様子に、じわじわと私の心の中に黒い靄のような不安が広がって行く。
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