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(もしかして、本当に見つからないの?)
閑古鳥のカフェから、折角ここまで来れたのに。
このままフクパラを閉めることになれば、これまで皆で築いて来たものが全て水の泡だ。
お客さんと楽しそうに会話をする皆の笑顔、オウルナイトのパフォーマンスを後押しするイルミネーションのようなペンライトの輝き、SNSで届いた女の子達からの温かいメッセージ。
私の頭の中で、短い間の思い出が走馬灯のように浮かんでは消えて行く。
(そんなの嫌。絶対嫌!)
「葉さん、何か思い出せませんか。何でも良いんです。マスターが話していたこと、まだ片付けてない場所、何でも良いから・・・・・・っ!」
思わず葉さんの肩を掴む。そのまますがるように彼の肩を揺すった。
「お願い、葉さん」
「おいみやび、落ち着けって」
店内の騒ぎに、キッチンで夕飯を作っていたハルさんが慌てて声を掛ける。
けれどここで見つからないと、フクパラは心無いマスターの親族の手に渡ってしまう。それは私達にとっても、長年この地で喫茶店を営んで来たマスター本人にとっても、きっと最も望まぬ結果だ。
何より、大好きなこの店を、夢半ばで閉じる訳には行かない。あらぬバッドエンドを想像しては、私は思わず涙が滲んだ。
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