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「でもね、結。フクパラはトキフェスに出るよ」
凛としたはやての言葉に驚いて振り返る。彼は真っ直ぐに結を見つめ、そして言った。
「フクパラのメンバーは、上京して一人ぼっちだった自分に初めて出来た仲間だった。自分はフクパラに出来ることなら何でもしたいし、もっとフクパラが沢山の人に愛してもらえるお店になって欲しいと思ってる」
持ち前の大きな瞳にきらきらと光が宿る。心からの言葉を伝える彼の姿は、漫画の主人公のように輝いて見えた。
「結が嫌なら出なくても良い。だけどその代わりに、自分達に教えて欲しい。人を感動させるパフォーマンスについて。だって自分、結のダンスに感動したから。みやびちゃんもそう思うでしょ?」
はやてに振られ、私も「勿論!」と頷く。
「ステージに出ることを強制するつもりは全くありません。だけど結君が力を貸してくれれば、フクパラのメンバーがもっと輝けるような気がするんです」
「・・・・・・」
結君は私達の瞳をじっと見つめる。
そしてそっと視線を落とすと、「教えるだけだから」と、自分に言い聞かせるように小さく呟いた。
それが彼なりの同意の言葉であったと理解して、ほっと胸を撫で下ろす。
「ありがとう、結君」
礼を言うと、結君は仏頂面でこちらを向いた。
「どんなステージでも、中途半端なパフォーマンスはすぐに観客に伝わる。フクパラの名前を上げるのも落とすのも自分次第。それくらいの覚悟を持って、ステージに挑めるかの話だと思う」
「大丈夫。やり切ってみせるよ」
結君の言葉に、はやては頷く。
常に冷静沈着だった結君の、パフォーマンスに対する静かな情熱を感じる瞬間だった。
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