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「あ・・・・・・」
咄嗟に持っていた漫画を背中に隠す。
「みやびも帰り?」
狼狽する私の様子には気付かず、女の子はフレンドリーに話しかけて来る。
「うん。ちょっと、バイト帰り」
曖昧に誤魔化すと、髪を明るい色に染めた彼女は、ぱっと顔を輝かせた。
「みやび、バイトしてたんだ! どこでしてるの?」
「えっと・・・・・・サンライズシティの近くにある、小さなカフェだよ」
「へー! 今度遊びに行って良い!?」
「う、うん。またね」
私の返事は、「絵里ー、二次会行こうぜー」と彼女の肩に馴れ馴れしく腕を回す男の声によってかき消された。
彼等から漂う酒の香りが鼻をつく。
「行く~! じゃあみやび、また大学で」
再びグループの会話に戻って行く彼女に、私は引きつったような作り笑いで手を振った。
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