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「どうして隠したの、その漫画」
核心を突く彼の問いに、思わず漫画を持つ左手にぎゅっと力が籠る。
彼の手を振りほどいて逃げようとしたが、答えを知るまでその手を離すつもりは無いようだった。
観念して力を緩めると、私ははやてに打ち明けた。
「私、小さい頃から『ラブリーキャッチ』が好き」
「知ってる」
「漫画やアニメも、大好き」
「知ってるよ」
「でもね」
震える声で私は続ける。
「高校生の時、クラスメイトに言われちゃったの。ラブキャが好きなんておかしい、高校生なのに変だ、って。自分が大好きだったものを頭ごなしに否定されて、すごくショックだった」
私が授業で使っていたラブキャの下敷きを指さして、クラスメイトは「頭おかしい」と言い放った。
まるで気持ち悪いものを見るかのような彼らの瞳はトラウマのように私の記憶の中にこびり付き、今でも忘れることはできない。
「そのことがあってから『私って変な人間なんだ』って思うようになって。人前で本当の姿をさらけ出すことが怖くなった」
そんな自分も受容して、諦めて生きて来たはずなのに。
はやての前でいざ口にすると、胸の奥がずきりと痛んだ。
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