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サンライズシティ内の吹き抜けを使用したステージでは今期放送の人気アニメのトークショーをやっており、出演者のコメントに応じて客席からは時折笑い声が聞こえて来る。
「結、どうするの」
ステージ裏から壇上をじっと見つめる結に、葉さんが声を掛ける。結君は唇を真一文字に結んだままだ。
他の三人に合わせてカフェの制服で来たものの、ステージに出るか否かは未だに考えあぐねているようだった。
「結が初めて店に来た時のこと、今でも覚えてるよ。結は言ったんだ。やりたいことなんか何も無い、ただ残りの退屈な高校生活の暇つぶしができたら良いって。何もかもに絶望して、諦めたその目は、昔の俺にそっくりだった」
葉さんは口元に笑みを浮かべると、結君の顔を覗き込んで囁く。
「でも今なら、『できそう』な気がしない?」
差し出されたブラウンのエプロンを、結君は受け取った。
「・・・・・・やります」
そして、ひらりとエプロンを身に着ける。葉さんは「そう来なくっちゃ」と、満足気に頷き、彼の背中を叩いた。
「これ、結君の分。ちゃんと作っておいたから」
私は紫色のロゼットを手渡す。結君が渡されたロゼットをエプロンに付けて、オウルナイトのメンバー全員が揃った。
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