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「小さい頃からダンスしかやって来なかった。それを辞めてしまった今、最早自分に価値なんて無いと思っていた。だけど、」
そう言って結君の瞳が揺れる。
「はやてとみやびはこれまで築いて来たものを、他者に教える側になるという新しい可能性を示してくれた。礼を言うのは、こっちの方だ」
私達の間に沈黙が流れる。
脳裏には再び、昼の光景が蘇った。
フクパラを沢山の人に知ってもらうため、結君に仕込まれたパフォーマンスを精一杯に披露する四人。そして、楽しそうにペンライトを振る女の子達・・・・・・。
「結君が力を貸してくれなきゃ、オウルナイトはきっとステージに立つことさえできなかったよ。結君のお陰でパフォーマンスを成功させることができて、本当に感動したし、嬉しかった」
(確かに一人で踊る勇気は失くしてしまったかもしれない。だけど結君には一緒に踊る仲間がいるんだ)
「オウルナイトとしての四人のパフォーマンスが、また結君が笑顔でダンスをする足掛かりになったら良いな」
結君のダンスは、多くの人の視線を釘付けにする魅力がある。
観客が彼のダンスを臨むだけでなく、彼自身にも踊る楽しさを再び見つけて欲しいと、私は強く思った。
「・・・・・・みやびはいつもそう言ってくれるな」
小さな声でそう言って、結君がふわりと笑顔になる。
「ありがとう」
初めて目にする、クールな彼の優しい表情だった。
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