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「あんた、この店の関係者か」
ドスの聞いた声で男は尋ねる。年は葉さんやハルさんより一回り上ほどに見えた。
「は、はい」
「袋小路葉の居場所を教えろ」
葉さんに何か用だろうか。
今日の開店準備は彼が担当だったから、もう店内にはいるはずだ。
(どうしよう。素直に呼ぶべきなのかな。でももし葉さんに危険が及んだら・・・・・・)
「教えなくたって此処にいるけど」
冷や汗をかきながら言おうか言うまいか考えあぐねていれば、上から氷のように冷たい声が降り注ぐ。瞬間、ぐい、と強く肩を引かれた。
「葉さん!?」
近所のスーパーの袋を手に提げているところを見ると、どうやら食材の買い出しに行っていたようだった。
私の肩を抱き寄せる右手は、あまりの力強さに苦痛を感じるほどだ。
「次、彼女に近付いたら神田川に沈めてあげる」
静かに怒るその声は、周りを一瞬で黙らせる威圧感があった。
葉さんに凄まれ、男は分が悪そうに舌打ちをする。
「池袋を去ったと思ってたら、こんなシケた店でオーナーやってたのか。なあ? 『ミミズクの王様』」
「ミミズクは解散した。もう俺には関係ないよ」
『ミミズクの王様』とは何だろう。男が挑発するも、葉さんは一切乗る気が無いようだった。
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