6話「督促状」

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「彼は孤独だったんだ。自分には家族もいない、病気を見舞ってくれる人もいないって、口癖のように言ってたよ。それなのに、死んだことが分かって資産が絡むようになったら突然親族だって言い出して来て」  そう言って葉さんは悔しそうに督促状を握りしめる。  フクパラにやって来た刺青の男は、葉さん曰く裏社会と繋がりのある不動産会社を経営しているのだそうだ。督促状の差出人は、何らかのきっかけで喫茶店がフクパラに変わっていることに気付き、彼に立ち退きを依頼したのだろう。 「マスターは確かに葉に店を譲ると言ったんだな?」  ハルさんの問いに、葉さんは頷く。 「そう。だけどそれはあくまでマスターからの言伝(ことづて)に過ぎない」  そして拳をぎゅっと握りしめると、苦しそうに言葉を吐いた。 「あいつがマスターと血縁関係にある親族からの督促状を持って来た以上、この店は閉めないといけない」
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