序章 それは、紅茶の湯気の様に。

1/1
前へ
/40ページ
次へ

序章 それは、紅茶の湯気の様に。

彼女が、目の前で、消えた。 …朝の幻覚か何かだろうか。 自分に感覚がある事さえ信じられないのに、もっとわからない事が起こった。 そもそも、今は朝なんだろうか。 手に残った彼女の温もりが、段々と消えていく。 私はそれが嫌で、手を握った。 これが消えたら、彼女が完全に消えてしまう様な気がした。 …きっと、私の目がおかしいだけだ。 私は、立ち上がった。 そこにあるのは、あるはずのない光景と、あるはずのない自分だけだった。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加