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第一部 私と彼女の愛。
返事を期待せずに、古びた木製のドアをノックした。
案の定返事はなかったので、私はゆっくりとドアを開けた。ふわ、と絨毯を踏んで、部屋の奥へと向かう。南側に設置された小さな窓から、暖かな日差しが注いでいる。その窓の下には、純白のベッドが置かれていた。眩い白の中に垣間見えるのは、金糸の束だ。
私は、静かにベッドの横の椅子に座った。そこで、彼女の姿が鮮明に映る。
金糸の様な真っ直ぐで輝く金髪、ベッドと同化する程の真っ白な肌。そして、瞼に沈んだ海色の瞳。
彼女の瞳ほど綺麗なものは無いと、彼女を取り巻く人々は言う。それは、遠くから眺めた海の様に青く、透き通り、そして深い。そんな私も、彼女の瞳が大好きだった。
彼女の顔を眺めていると、その瞼がゆっくりと開かれた。その海色の瞳に見つめられる。
「…来てくれたのね。」
「うん。起こしちゃった?」
私が聞くと、彼女は笑って首を振る。
「ううん。私が勝手に起きただけよ。昨日のお話、聞かせてよ。出陣祭だったでしょう?」
私は笑って彼女の冷たい手を取った。
「勿論よ。夜の舞なんて本当に素晴らしかったわ。」
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