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序章 それは、紅茶の湯気の様に。
彼女が、目の前で、消えた。
…朝の幻覚か何かだろうか。
自分に感覚がある事さえ信じられないのに、もっとわからない事が起こった。
そもそも、今は朝なんだろうか。
手に残った彼女の温もりが、段々と消えていく。
私はそれが嫌で、手を握った。
これが消えたら、彼女が完全に消えてしまう様な気がした。
…きっと、私の目がおかしいだけだ。
私は、立ち上がった。
そこにあるのは、あるはずのない光景と、あるはずのない自分だけだった。
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