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目を開けば、見慣れた天井が見えた。
ゆっくり自分の左胸に手を当てて、無意識に深く息を吸った。
「ゆ、め……?」
今度はホッと息を吐き出して、身体を起き上がらせる。横に置いてあるネコ型の目覚まし時計を見ると、まだ朝の6時半だった。
こんなに早く起きたのは初めてだった。
昨日の男子の言葉は、まだ心に残っていたものの昨日の夜よりは少しだけ気持ちは和らいでいた。
のたのたとまだ眠っている身体と頭を無理矢理起こして、着替えをしてリビングに向かった。
この時間はすでにお母さんが起きていて、キッチンで朝ご飯を作っている。
「おはよう」
そう声をかけると、「あら、おはよう。早いわね」と驚いていた。
学校まで、まだ時間がある。
何かお手伝いをしようと、燃えるゴミが玄関に置いてあるのを見つけて、ゴミを捨てに外に出た。
ゴミステーションに行くと、近所のおばさんがゴミを丁度捨てに来ていた。
「おはようございます」
そう声をかけると、おばさんは驚いたように私を見つめて微笑む。
「あら、おはよう。朝からお手伝い偉いわねぇ」
「今日は早く起きたので」
そう笑って答える。
『うちの子もこの子みたいに早く起きりゃあ、助かるんだけどね。はあ、本当なんであんな子になっちゃったのかしら。よその子に負けてられないわ』
「え?」
そのおばさんの声だけど、いつも私に話しかけるより低めの声が聞こえた。
「どうかした?」
私に話しかけているとは思えないことを喋っていたから、つい声を出して驚くと、おばさんがまた元の優しい声色で話しかけてくる。
「負けてられないって、言ってたから……どういう意味なのかなって」
「え? あらやだ。私、口に出してた? ごめんなさいねぇ。じゃあ、またね」
おばさんはそう言って、家に戻っていった。
よく分からなくて、首を傾げていると……。
『いやあ、朝から犬のフン踏んじゃった』
『あいつ、怒るかなぁ。残業で後輩の家に泊まってたって言ったらバレないか。大丈夫だよな』
『うわ~、朝練めんど~』
え!? え!?
急にいろんな声が頭の中に聞こえるようになり、思わず耳を塞いだ。
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