第一章 機械の苦悩

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 私は元々人間だ。この街は毒されている。人間だった頃は、公害も他の生物の事も大切にしていたのに今の僕達は、機械化しすぎている。身も心も機械に染まって、見えるものも、変えるべきものもわかっているはずなのにみんな機械には関係ないと目を瞑る。  人体機械化が始まったのは、君たちの時代から数えると紀元前1500年ほど昔である。最初の頃は、義足や義眼に義手だったのだが現在では、全身の機械化が主流である。全身が機械だと不便なものは何もない。病気にもならず、今の金属は君らの時代に比べて錆びたりしないのだそれもこれも人工知能のおかげである。人工知能による学問の進歩は今や成長しすぎておりこれ以上進歩すると学問のインフレが起きるとのデータが君たちの時代で言う中国で発表された。また次々とアメリカ、日本、イギリスとこのインフレが報告されている。これにより現在は学問の進展そのものが抑制されている。その為人々はお金や寿命を増やす事に専念した。その一つである寿命を増やす事がこの人体の機械化なのだ。生きることは金を増やすことにもつながる。また子供をいつもの生命活動の一端として作ることはなくなり代わりに自由な体のパーツを選び自由に子孫を残している。こうなると人口は増加する一方になってしまう為、国々は宇宙に進展した。機械化した身体を宇宙に対応させる為に宇宙専用のパーツに全身を切り替えるだけだ。それはまるで君達の時代で言う遠泳のように着替えるだけで宇宙を旅できるのだ。死ぬことはどんどん難しくなっていった。そう我々人類は無限の可能性を見ていた時代からついに無限の要望に駆られているのだ。そんな時代が私のいる時代なのだ。  私の名前は肉のついた人の時はオリバーだったが、今は無限に近い数式で構成されているチップが私の名前の役割を果たしている。肉のついた私のことをこれからは肉付きオリバーと記す事にする。今現在私はオリバーに戻りたいと後悔の念に駆られているのだ。なぜなら何度も何度も過去の自分をタイムマシンによって見ていると新しい可能性に希望を持っていた私は幸せだったと思える。初めてクリスマスのプレゼントの小包を開けた時や海に初めて入った時や 勉強で首席をとっていい大学に行こうと生き急いだ日々。あれらは私の最も美しい時間であって戻ることは到底できないのである。
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