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何気なく入った古本屋。いつも会社へ通うため、通るその道に入ったことの無い古本屋を見つけたのだ。隠れ家的な雰囲気があり、その雰囲気に飲まれたのもある。
カビ臭く、古本の匂いになかなかの本が揃っているな、と感じた。
本棚のタイトルを順に見ていく。短く、狭い、そのスペースでどれだけ本が魅力的に感じるかどうかも、本を買う時に重要なことだと思っている。
吸い込まれるようにひとつの本棚の前にたどり着き、吸い込まれるようにして1冊の本を手にとった。
どうにも表紙が不思議でならない。その表紙に興味を理不尽なまでに抱き、ついつい眺め、手に取ったのだ。
どうやら、その不思議な表紙は紙で作られたわけではないらしい。普通の革と比べても、なにか、違う。
「お気に召されましたか?」
知らない男が突然あらわれ、声をかけてきた。その時は、不思議な表紙の本を持った緊張状態であり、その本を持った時から感じている、言い表すことの出来ない不安に駆られていた。だからこそ、その男の姿、形、声に恐怖を感じ、また、言い表すことの出来ないなにかを、感じていた。
この気持ちをなんと表せば良いのか、訳の分からないものをポツリと置かれ、それがどうにも、禍々しい見た目であり、部屋全体は暗く、ひとりぼっちだった時の気持ちに似ている。
男は美しい顔をしていた。女ならば、1度は夢見るほどの男だ。人間味を感じられないほどの立ち姿、ほくろ1つない顔。人に伝えることの出来ない恐怖感。これ以上、顔を会わせたくない。一緒にいたくない。と本能が告げていた。
「あぁ、気にしないでください。……、………本をあなたに差し上げますよ。どうやら気に入られているようですし。」
確かに、興味を惹かれはしたが、買おうとまでは思っていなかった。
「もちろん、お代は結構です。」
不気味な男に本を差し出される。意味がわからない行動は、警戒を産む、ということを実感している。
笑みを浮かべるその男を最後におれはどうにかしてしまった。
警戒していたはずなのにだ。
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